俺人〜OREGIN〜俺、バカだから人工知能に代わりに頑張ってもらうまでのお話

このブログでは人工知能(AI)の多角的な側面を深く掘り下げ、その理論と実践の両面を探求していきます。データから知見を引き出す手法の解説に加え、AIが社会に与える影響や、健全な発展に向けたガバナンスの重要性にも焦点を当てます。視覚情報や言語情報、その他の多様なデータを活用した予測モデルの構築を通じて、AIがどのように現実世界の問題解決に貢献できるかを調査・発信していきたいと思います。

Open Power AI Consortiumについて調査してみました:AIがもたらす電力の未来

EPRI(電力研究所)が中心となって立ち上げられた「Open Power AI Consortium」について調査しました。

msites.epri.com

 

ミッションとビジョン

EPRIとは、電力分野で世界的に活動する独立系の非営利研究機関であり、クリーンで安全、信頼できる手頃な価格で公平な電力供給を目指している組織です。

オープンAIコンソーシアムの主な目的は、AI、特に進んだAIを活用して、電気の生成、送電、そして利用方法を根本から変革することです。具体的には、効率の向上、信頼性やレジリエンスの強化、コスト削減、さらには顧客体験の向上を広範に目指しています。EPRIのCEOも「今後10年で革命を起こす可能性がある」と述べており、そのインパクトは大きいとされています。

取り組みにおける課題

この取り組みにおける主要な課題の一つはデータです。電力業界のデータの約95%がプライベート、つまり個々の組織が保有しているため、AIに必要なデータの壁を乗り越えることが不可欠とされています。

コンソーシアムの協力体制が重要であり、EPRIが元々持っている電力会社、テクノロジー企業、大学、研究機関との幅広いネットワークがデータの壁を乗り越える鍵となると考えられています。単に技術を導入するだけでなく、業界全体で知識やデータを共有することでイノベーションを加速させようという考えです。

活動の3つの柱

コンソーシアムの活動は主に以下の3つの柱があります:

  1. 電力セクター特有の課題に対応するオープンソースのAIモデルやデータセットライブラリーの開発と維持。
  2. AIサンドボックスという安全なテスト環境の構築。これは実際の電力システムに影響を与えることなくAIを試せる実験場で、新しいAI導入のリスクを最小限に抑えつつ効果を検証できます。
  3. 開発したAIモデルを参加メンバーが実際に利用するのをサポートし、フィードバックを得てモデルを継続的に改善していく実践的なサイクルを回すこと。

参加メンバー

多様な参加メンバーが特徴で、アメリカの大手電力会社だけでなく、サウジアラビア、韓国、フランスといった国際的なプレイヤー、さらにAWSMicrosoftNVIDIAOracle
といった巨大テック企業や、Articul8のようなAI専門企業も参加しています。

特に注目されたのが、NVIDIAのGTCイベントでの発表で、アーティル8とNVIDIAが協力して電力システムに特化した業界初の生成AIモデルを開発し、これをNVIDIAマイクロサービスとして提供する予定であることです。これにより、各組織がゼロから開発する負担を減らし、実用化を加速させる狙いがあります。

また、電力会社のCIOやCOといった経営層で構成されるアドバイザリーグループもあり、戦略的な方向付けを行い、現場のニーズと技術開発が乖離しないように配慮されています。

このプロジェクトは、オープンソース、協力、そして実用がキーワードとなる取り組みであり、送電網の安定性や効率性が向上することで、最終的にはエネルギーの供給方法や料金にも影響を与え、私たちの生活にも関わってくる可能性があります。

ただし、オープンソースのAIモデル開発が進む一方で、エネルギーデータは機密性が高く重要インフラに関わる情報であるため、オープンであることとセキュリティのバランスをどのように保っていくかが、コンソーシアムが今後向き合っていくべき非常に重要な問いであると指摘されています。技術開発だけでなく、その運用のルール作りも合わせて注目していく必要があります。

おわりに

今回の「Open Power AI Consortium」に関する調査を通じて、AIの社会実装における新たな側面を学びました。これまで内閣府経済産業省といった公的機関が策定するAI事業者ガイドラインやAI戦略会議の動向を追ってきましたが、具体的な産業分野、特に重要インフラである電力セクターにおけるAI活用の取り組みは、理論的な枠組みが現実世界でどのように適用され、どのような課題に直面するのかを深く理解する上で貴重な知見となりました。

特に、電力業界特有のデータプライバシーとセキュリティの課題、そしてそれをオープンソースの原則と両立させるためのアプローチは、AIガバナンスと規制の重要性を改めて認識させます。技術開発だけでなく、その運用のルール作りや国際的な協力体制の構築が不可欠であるという事実は、AIの健全な発展には多角的な視点が必要であることを示唆しています。

今後もAIの倫理的・法的な側面、そして具体的な産業分野での応用事例にも注目していきたいと思います。